ただ、その父の言動も、今になってまた違う捉え方に変わりつつあります。というのも、うちは父方、母方とも親戚づきあいがまったくなかったのですが、最近になって父方の親戚から、父は気づかいのある、きょうだいを大事にする人だったと聞いたのです。母に内緒で実家を訪れては、妹たちにお金を包んで渡したりもしていたようです。
あの頃、もしかして父は、母の気持ちがおさまり、それ以上の危害を私に加えないよう、わざと母の肩をもっていたのかもしれない。そう考えると、父も大変だったのだと思うのです。
「夜の女みたい」と非難され……
母は“女性性”を嫌悪し、私が女であることも気に入らなかったようです。幼い頃から私の髪は男の子のように短く刈られ、鏡を見て髪をとかすだけで、「夜の女みたい」と非難されました。女であることが母を悲しませる――。ここでも「悪いのは私」と自分を責めてしまうのです。
そんな母でしたが、娘の“女”の部分を利用したことがありました。知り合いに医師の息子がいて、彼から映画やコンサートに誘われるたび、私は断っていました。ところが、母はそれを怒る。同級生の男の子から電話がかかってくるだけで「ふしだら。あんたにスキがある」と目を剥く母なのに――。
母は権威に弱く、医師や弁護士、学校の先生には目をキラキラさせてしまう人でした。あるとき、その方から、「いただきものをお裾分けするから」と言われ、母の命令のもと、仕方なく私が出向きました。そこで私は襲われそうになり、危ういところで逃げ帰ったのです。
そんな私を、母は怒りの表情で迎えました。娘の様子からレイプされそうになったことは想像できるはずなのに、「今すぐお詫びに行きなさい」と。このときばかりは断固拒否しましたが、「医者の息子というだけで私を売ろうとした」という思いは、私の心にまた消えない傷を刻みつけたのです。
自分の性とどう向き合えばいいのかわからないまま、私は大人になりました。そして、20代以降、子宮筋腫、子宮内膜症など、婦人科系の病気にしばしば見舞われることになります。ところが、カウンセリングやセラピーの勉強をするようになって、症状はすっかり消えました。
思うに、母からのプレッシャーにより、女であることを自分に許さず、それが女性として機能しないような体にしていたのではないか。自分の女性性をきちんと受け入れられるようになって、体が本来の機能を取り戻した、そんなふうに考えるのです。