こうした経験を経て、私自身、セラピストになろうと勉強をし、2004年に認定資格をとりました。

母に「もう会わない」と通告したのはこの頃。恐怖支配から逃れるには、関係を断ち切るしかない。自分の親ですから罪悪感はあったけれど、そういうことはもう考えまい――。40代半ばにして、私はようやく自分自身の人生を生きようと決意できたのです。兄とも連絡を絶ちました。

その後、セラピストとしてのキャリアアップをはかるため、アメリカの専門大学で4年間学んだのですが、ここでも自分自身の過去をたどるセッションを続けました。時間はかかったけれど、それは、母との関係でずっと抱えてきたトラウマを癒やす作業でもありました。

 

生まれてきたからには、幸せになっていい

心の問題や精神疾患について学ぶうちにわかったのですが、母はおそらく境界性パーソナリティ障害でした。そうとわかって、これまでの母の言動の数々がすとんと腑に落ちました。この病気は感情や行動が不安定になりがちです。

とはいえ、誰もが攻撃的になるわけではありません。母の場合は、思い込みが極めて強く、相手の考えが自分と違うとか、ちょっとしたことでも感情が激しく乱れる。加えて、娘への支配欲、父との不仲も影響していたでしょう。そうしたものが暴言、虚言、私への過激な言動となってあらわれていたのでは、と思うのです。

母もかわいそうではありますが、わかりあえることのない母娘関係のもとでは、私は私の道を行くしかありません。

今、私のもとに来る相談者の多くは、「娘」という立場で母親との問題に悩み続けてきた方たち。親を否定することに罪悪感をもつために、悪いのは自分だと思い込み、自分を肯定できないまま大人になった――。私と同じですね。

さらに私の場合でいうと、私が自分の思う通りに何かをやろうとすると、母が怒ってコトを起こす。そういう連続のなかで、「私は幸せになってはいけないんだ」と心に刻み込まれていったのです。

でも、そうじゃない。今の私は相談者の方々にこう問いかけます。「あなたは何のために生まれてきたの?」――。生まれてきたからには、幸せになっていいはず。だから、「自分が幸せになることを自分に許してあげて」と声を大にして言いたいのです。