「なりすまし詐欺のような気がします」

お金を受け取りに来たのは、おどおどした小柄な男の子だった。私は一刻も早く着きますようにと祈り、「よろしく」と渡す。その後通っている病院に行き、家に帰ったのは夕方だった。借用書を作らないと、と思いたち、行政書士の会社に電話をする。すると、「どうもなりすまし詐欺のような気がします。甥御さんに電話をして、確かめてください」と言われ、健ちゃんにかけるが、出ない。あわてて実家にいるもう一人の甥のお嫁さんに電話して調べてもらうと、携帯の番号がまったく違っている。「詐欺に遭ったわ!」と思わず大声が出た。

《健ちゃん》との電話の最中は、「バレたら健ちゃんがかわいそう」とばかり考えて、冷静になれなかったし、人を疑わない私の性格が災いした。コツコツ貯めたお金を騙し取られたことは悔しくてたまらないが、警察に事情を聞かれているうち、不思議と達観した。

「もうお金はいらない。世の中に寄付したと思えば、いいんじゃないか」。自分の不注意が原因でこうなったのだから仕方がない、と切り替えられたのだ。その日からは節約に励み、あらためて貯金の目標を立てた。

とはいえ、詐欺はぜったいに許せない犯罪だ。私のような目に遭う人が一人でも減るようにと願っている。


※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ