意志が弱いのではなく強すぎる方が多い
依存症の専門医としてメディアの取材を受けることも多い私ですが、実は依存症に関わるようになったのは、担当の科を決めるときにジャンケンで負けたから(笑)。その後、臨床を重ねるうちにこの病気の「人間くささ」に惹きつけられていきました。
人は誰でも何かに依存して生きている。では、どこからが病気なのか。
最初はストレスを解消し、生活の質を高めるために愛好していたことが、いつの間にかそれによって生活の質が低下しているにもかかわらず手放せないという逆転現象が起きたときが病の始まりです。薬物や特定の行動によるドーパミンの活性化で脳の報酬系回路に異常が起きる。この依存症の仕組みは、薬物やアルコール摂取でも、ギャンブルや買い物などの行為でも変わりません。
「依存症の人は意志が弱い」と誤解されがちですが、実際は逆に意志が強すぎる方が多い。普段はとてもいい人で、人に愚痴ったり泣きついたりせず化学物質や行為で自分の心を鎮めようとする。他人に頼らず薬やお酒を使って正気を保っている人たちなのです。
かくいう私も、喫煙者でして(笑)。私自身は、気分転換の方法として助けられています。人が生き延びるためには、“ちょっとした不健康”の愉しみは必要ではないでしょうか。