50代、更年期に心も体もガタッときて

ところが50代に入ると、いわゆる更年期症状というものが始まって、心も体もガタッときたんです。それまでまわりの更年期の話を聞いてもどこか他人事で、かわいそうだな、ぐらいにしか思っていなかったのに、いざ自分にも症状が出始めたら、それはしんどくて。

そのうえ成人喘息を発症してしまって、ちょっとした気候の変化で、ゴホゴホと咳き込んでしまう。体調が悪くなると、精神的にも不安定になり、うつっぽいというか、どんどんネガティヴになっていきました。

私なんか誰にも必要とされない、このまま社会から取り残されていくんだ、親としても、女優としてももう用済みなんだ……と、次から次へと負の感情が湧いてくるんです。卒母だなんて喜んでいたけれど、その後、子どもたちが結婚したり、孫ができたり、嫁姑問題があったりと、本当の意味で親子関係が大きく変化していたのでしょう。

子どもたちは自分の人生で精いっぱい。急にズンッと痛むように、「私は今、ひとりなんだ」と、すべてにおいて自信を失っていきました。

 

母と優作の年齢を超えて

優作の死後、ひとりで子育てをする中で、何度も何度も大変な試練をくぐり抜けてきたはずなのに、自分がこんなにも弱いのかと……。あの時はつらかったですね。

そのしんどさから、何とか抜け出せたと感じたのは、57歳の時です。私にとって57というのは特別な年齢でした。母がその年齢で、がんのため亡くなりましたから。

母が最期に入院していたのは、父の故郷である福岡県です。私は看病のために、東京を離れて子どもたちと福岡に移住。毎日、母の病院まで、峠の山道を車で走っていました。運転中、こうしている間にも、お母さんが死んでしまうかもしれない……と、いつも不安で、自分を元気づけるために、ウルフルズの歌「バンザイ~好きでよかった~」を、繰り返し聴いていたことを覚えています。