左から草笛光子さん、天海祐希さん、清水ミチコさん(撮影=木村直軌)
人生100年時代。長く一生を楽しめる喜びはあるけれど、いまはどうにも先行き不透明。いくら老後の準備を整えても、安心は得られなくて……。そんな家庭の一コマを描いた映画『老後の資金がありません!』に出演する天海祐希さんと草笛光子さんが、今回のゲスト。かつてお2人と《共演》の過去を持つ清水ミチコさんが、それぞれが抱える苦労や素敵な歳の重ね方について迫ります!(撮影=木村直軌 構成=本誌編集部)

<前編よりつづく

天海「草笛さんのように歳を重ねられるなら未来に希望が」

草笛 この映画、三谷さんも出てらしたのよね。

天海 ちょっとだけですけど、強烈な役で出てきます。例の、草笛さんが扮装してるシーンで。

草笛 ちょうどその本番前に、私の前歯が1本取れちゃったの。落っこちたのを拾って入れようとしたけど、うまく入らない。そうしたら監督が「そのまま映させてください」って言ったのよ。

清水 まさか、OKしたんですか。

草笛 そうよ、私のひどいところ、全部撮ったの。

天海 それでも品がありました。

草笛 心のなかじゃ、すごく怒ってたのよ。こんなところまで撮ってってね(笑)。この映画が、きっと私のひどい顔の最後ね。

天海 いや、まだまだ行きましょう(笑)。だって、普段がおきれいなんですから。私は「中世ヨーロッパの貴婦人」って呼んでる。日本人で、これほどヨーロッパの宮殿が、パリのオペラ座が似合う人はいますか。こんなに素敵に歳を重ねられるんだと思ったら、未来に希望が持てるじゃないですか。

草笛 ところで、あなたはいくつになった?

天海 54です。

清水 ここまで自然に若いってすごいわ。

草笛 顔にシワひとつない、シミもない。たるんでもいない。

天海 ちゃんと人並みにありますよ。うちのメイクさんが頑張ってくれているだけです。

草笛 でもね、これからが長いんだから。

清水 草笛さんはいまの天海さんの歳のころ、なにをしてましたか。

草笛 もう忘れちゃったわ。結婚したり、別れたりさ。

清水 それは20代でしょう。

天海 そういえば、50代でお家を建てたっておっしゃってましたね。

草笛 そうだった。借金してね。お金が払えないで赤紙を貼られたこともあるけど、「いまのうちに建てておこう」と思って地下に稽古場もつくったの。それだけは朝倉摂さんに褒められた。「女優は毛皮とか、体にくっつけるものを買うけど、よくぞ稽古場をつくった」って。ビッグバンドが入っても外に音が漏れないし、私以外にもいろいろな人が使ってる。家を建てるのも、案外面白いわよ。