天海「草笛さんのように歳を重ねられるなら未来に希望が」
草笛 この映画、三谷さんも出てらしたのよね。
天海 ちょっとだけですけど、強烈な役で出てきます。例の、草笛さんが扮装してるシーンで。
草笛 ちょうどその本番前に、私の前歯が1本取れちゃったの。落っこちたのを拾って入れようとしたけど、うまく入らない。そうしたら監督が「そのまま映させてください」って言ったのよ。
清水 まさか、OKしたんですか。
草笛 そうよ、私のひどいところ、全部撮ったの。
天海 それでも品がありました。
草笛 心のなかじゃ、すごく怒ってたのよ。こんなところまで撮ってってね(笑)。この映画が、きっと私のひどい顔の最後ね。
天海 いや、まだまだ行きましょう(笑)。だって、普段がおきれいなんですから。私は「中世ヨーロッパの貴婦人」って呼んでる。日本人で、これほどヨーロッパの宮殿が、パリのオペラ座が似合う人はいますか。こんなに素敵に歳を重ねられるんだと思ったら、未来に希望が持てるじゃないですか。
草笛 ところで、あなたはいくつになった?
天海 54です。
清水 ここまで自然に若いってすごいわ。
草笛 顔にシワひとつない、シミもない。たるんでもいない。
天海 ちゃんと人並みにありますよ。うちのメイクさんが頑張ってくれているだけです。
草笛 でもね、これからが長いんだから。
清水 草笛さんはいまの天海さんの歳のころ、なにをしてましたか。
草笛 もう忘れちゃったわ。結婚したり、別れたりさ。
清水 それは20代でしょう。
天海 そういえば、50代でお家を建てたっておっしゃってましたね。
草笛 そうだった。借金してね。お金が払えないで赤紙を貼られたこともあるけど、「いまのうちに建てておこう」と思って地下に稽古場もつくったの。それだけは朝倉摂さんに褒められた。「女優は毛皮とか、体にくっつけるものを買うけど、よくぞ稽古場をつくった」って。ビッグバンドが入っても外に音が漏れないし、私以外にもいろいろな人が使ってる。家を建てるのも、案外面白いわよ。