「あしびき会」と「ノラの箱舟」

上野 『媚びない老後』の中にも、家族解散旅行のことが書かれていましたが、子どものために本当に時間とエネルギー、そしてお金も使ってこられた。そういう方がどうやって老いていかれるのか、失礼ながら興味があります。

桐島 着々と老いております。(笑)

上野 ところで老後については、いつ頃から意識し始めました?

桐島 高校時代、仲間たちと、それぞれ結婚しても最後はみんな集まって一緒に暮らそうと、「あしびき会」という会を作りました。会の名前は、つまらない結婚をしようとする人の足を引っ張るという意味と、『万葉集』の「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」をかけているんです。

上野 私も同じことを考えて、「人形の家」のノラと、野良猫からとって「ノラの箱舟」と名付けました。でも、「あんた、やめなはれ」と忠告してくれた人がいた。同世代だと全員一緒に歳をとっていくから、助け合えなくなる。それに「女同士は、いさかうもんや」と。

桐島 確かに、女たちって裏切るのよね(笑)。私は長いこと、けっこうその気でいたのに、頼みの綱としていた友人たちは次々とフェイドアウトしている。

上野 結婚という関係も、一度はしてみたかった、とお書きでしたね。

桐島 でも、子どもたちから気に入られる相手ではなかったので、家庭内がぎくしゃくしてしまいました。

上野 最終的にはお相手に納得していただいて、離婚なさった。

桐島 はい。いざという時は看取ってくれる人がいるという安心感もあったのですが……。

上野 その期待はありました?

桐島 彼のほうが12歳下でしたから、順番でいうとね。

上野 もし桐島さんが要介護になったら、お世話してくださりそうな方でしたか?

桐島 彼とは離婚してからもいい友人でいましたが、私が病気になったら血相を変えて飛んできて、一所懸命世話をしてくれました。そういう点ではとても愛情深いし、面倒見がよかったですね。でも結局、64歳で亡くなってしまった。最後、私が彼を看取ったのです。

上野 予想とは逆の順番になってしまったわけですね。桐島さん、今後、どなたかとご一緒になるご予定は?

桐島 どうでしょう。可能性を否定したくはないですね。(笑)

上野 私も、思いきり年下の男性に看取られたいという野望が、ないわけではありません。(笑)