なぜ「魚」がキリストの象徴なのか

初期信者の地下墓地(カタコンベ)の壁には、キリストを若きよき羊飼いとして描いたものがある。

図2:キリスト教の様々なシンボル(『宗教図像学入門』より)

「ヨハネによる福音書」10章の記述にちなんだものだ(図2左)。

三世紀ごろからキリストを意味するギリシア語ΧΡΙΣΤΟΣ(クリストス)の最初の文字二つを組み合わせたクリスモンという図形が信仰の印として使用されるようになり(図2右上)、同じころ、十字形もまたシンボルとなった。

刑具スタウロスが本来どのような形状だったにせよ、シンボルとしては十字形として定着した。ΧΡのΧの形がイメージとして影響したのではないかとも言われる。十字形はそのまま人間の形を思わせるところも図像的に有利であった。

キリスト教のシンボルとしてはさらに、魚の形がある(上図2右下)。

ギリシア語でΙΗΣΟΥΣ(イエースース)ΧΡΙΣΤΟΣ(クリストス)ΘΕΟΥ ΥΙΟΣ(テウーヒュイオス)ΣΩΤΗΡ(ソーテール)<イエス・キリスト、神の子、救い主>と書いてその頭文字を集めればΙΧΘΥΣ(イクテュス)となり、これがギリシア語で「魚」を意味するため、魚の形が古代からキリスト(教)の象徴として使われていた。