クリスマスプレゼントは1万円札

母の価値観は、幼い私にとって受け入れがたいものでした。母は経済的に余裕がない家の長女として育ったため、「生きていくうえで最も大切なのは、愛ではなくお金」とよく言っていました。

母も仕事を持っていましたし、毎年、子どもたちに渡すクリスマスプレゼントは、熨斗袋に入った1万円札。年の離れた2人の姉はそれなりに喜んでいたようですが、まだサンタクロースを信じていたような年齢の私には、ものすごく違和感がありました。なぜ思い出になるようなものを選んでプレゼントしてくれないのだろうか、と。

「いい学校に入って、いい仕事に就けば幸せになれる」というのも母の口癖。そのため、幼稚園の頃から小学校レベルの算数や漢字のドリルを解かされました。そして答えを間違えると、頰をピシャリと叩かれるのです。泣きながら走って逃げても、背後から追いかけてきて手を上げる。40歳を過ぎても、母に追いかけられる夢を見てはうなされていたほどです。

姉たちに対しても母は同じような態度で接していましたが、姉妹で面白いように性格が違うので、私が母と最も性格が合わなかったということなのでしょう。

幼い頃は、どんなに理不尽だと感じても、圧倒的な力を持つ母に服従する以外の選択肢はありませんでした。ただ、心身ともに成長した中学生の頃には母に対抗できるようになって。多感な思春期ということもあり、「この人の言うことを鵜呑みにしてはダメだ」と、一事が万事反発していたので、向こうも大変だったと思います。