何より、一番の頼りは妻です。彼女がいなければ、とうてい生きてこられなかった。歳が離れているから私のほうが先に老いる覚悟くらいはあっただろうけれど、こんなに早く介助生活が始まるとは想像していなかったでしょう。退院した直後、脳出血の後遺症と慣れないリハビリ生活で私の精神状態がおかしくなっていたときは、彼女もつらかったと思います。
今や生活の主導権は妻。今日の取材も直接お目にかかってお話しするつもりだったけれど、関東に台風が接近して、そちらにうかがえなくなってしまった。私は「大手町まで連れてってくださいね」とお願いする立場なので、「危険ですから行けません」と言われれば、それに従うのみ(笑)。でも正しい判断をしてくれるので、心から頼りにしています。
だから今度は、自分が人のために役立ちたい、励ましたいという気持ちが強くなっています。本には、かなり赤裸々に情緒の揺れやリハビリ体験を書きました。それは、同じ体験をする人の参考になればと思ったからです。物語仕立ての、よくできた話にはしたくなかった、とでも言うのかな。この苦しみを味わったのは自分だけではないんだ、と誰かが救われるのなら本望です。
そして、映像で今の自分をありのままに見せるのは、障害のある人もない人も当たり前に一緒にいる世界に少しでも近づいてほしいと思うから。近頃は散歩中、道端でしょんぼりしている子どもを見ると、「大丈夫だよ、ガンバレ!」って心の中で応援してしまいます。余計なお世話ですが。(笑)
苦しいときも悔しいときも寂しいときも、流れる涙は温かかった。その涙の温かさが、この7年、私を力づけてくれました。障害のある老人にも、できることはきっとある。そんなじいさんの可能性を信じて、命ある限り新しい挑戦を続けていきたいと思っています。