「苦しいことがあるたびに、『ここを乗り越えればいいことがある』と思ってやってきました。実際、そうなんです。明けない夜はないというのは真理ですね。」(撮影:Yasuhiro Yasutomo)
芸能生活51年、数々のヒット曲を世に送り出し、現在はコロナ禍で始めた自身のメイク動画がYouTubeで話題の研ナオコさん。下積み時代の経験や子育て、闘病など、いくつもの紆余曲折はあったが、今も変わらず好きなのは、人を喜ばせることだと言う(構成=丸山あかね)

自粛生活中にYouTubeをはじめて

誰の人生も山あり谷ありですよね。私にしても、68年生きてきた道中には嬉しいことも嬉しくないこともありました。でも、ふと気づけば笑ってる。悩んだことも泣いたことも忘却の彼方へ消え去っていて、今はものすごーく穏やかな気持ちで過ごしています。

コロナ禍の前は、年間100本以上のステージに立っていました。お仕事があるのはありがたいことだし、芸能活動って楽しいし、何より目の前のことに必死でした。ところが昨年の3月以降、ピタッとすべての動きが止まって。

最初は戸惑っていたけれど、だんだん自宅で過ごすことに慣れてきて、ある日、思ったんです。私、こういう暮らしもしてみたかったかもって。ベランダで花や野菜を育てたり、愛犬と日がな一日戯れたり。個人事務所の社長をしている夫が作ったご飯をゆっくり時間をかけて食べたり……。

YouTube をはじめたのは、子どもたちからの勧めもありますが、自粛生活のなか、何かみなさんに喜んでもらえることをしたかったからです。家族や、我が家で同居している娘のようなマネージャーと企画を出し合って、「初めてウーバーイーツでタピオカミルクティーを頼んでみた」とか、「屋上にテントを張ってみた」とか、いろいろやってきました。といっても本業じゃないからユルユルもいいところなんですけど、自分自身も楽しんでいます。