社会学者の古市憲寿さんが、平成の終わりからの2年間を振り返った内容の新書を刊行しました。古市さんは「今年を振り返れば悲観的になっている人が多かった。でも、もっと楽観的になったほうがいいと感じ、そのタイトルを決めた」とのことでーー。(構成=篠藤ゆり、撮影=本社写真部)
いいことも悪いことも同じくらいの分量で起きている
今年は総じて悲観的な雰囲気が世の中を覆っていました。まわりをみても悲観的な人が多かった。でも「未来」のことは誰にもわからないわけです。わからないことを過剰に悲観するより、肩の力を抜いて楽観的になったほうがいいのではないか。そう思い、週刊誌の連載エッセイをまとめた本のタイトルを『楽観論』にしました。
平成の終わりから2年間の出来事を振り返ったのですが、厳しい現実を嘆いているだけでは希望がないと思いましたね。「いつも悪い予感ばかり当たる」という人は、「こういうことが起こったら嫌だ」と悲観的なことばかり考えている。一方、常にいいことを考えていると、「予感が当たった」「夢がかなった」と感じるものです。
実際にはどちらの人にも、いいことも悪いことも同じくらいの分量で起きているはず。考え方ひとつで、生きていくうえでのストレスは大きく変わると思います。
僕自身は昔から「絶対にこれがしたい」とか「これが欲しい」といったこだわりがなく、その時々で自分に心地いいことを選んできました。人間、自分の感情をごまかして我慢すると無理が出る。だから僕は、自分の感情から逆算して行動を決めてきたのです。受験勉強をしたくないから大学はAO入学を目指し、社会学者になったのも流れに身を任せた結果、という感じです。(笑)