力になってくれたのは娘

フランス国王ルイ16世に嫁いだアントワネットは、フランス革命で民衆に捕らえられ死を待つ前夜に、妹に向けた手紙で「ガラシャのように潔く最期を迎える」と綴っていました。死によって歴史に名を刻まれた二人の女性。遠く時空を超えた結びつきがあったことを含めて多くの方に知っていただきたいという思いがあります。そしてガラシャとアントワネットは、私がライフワークとしてきた「東洋と西洋の融合」に相応しい題材に思えるのです。

圧倒的なパフォーマンスで観客を魅了する川井さん(写真提供◎アイケイ・オフィス)

本当の20周年であった2020年に、コロナによって上演できなかったこの舞台は、構想の途中でさまざまな事情で一旦白紙に戻り、再構築することで生まれ変わりました。舞台というのは初めにストーリーがあり、音楽をそこに当てていくイメージがあると思いますが、逆に音楽に合わせて世界観を考えるという作り込みもして、両者が呼応しあうようなものができ上がりました。

今までの舞台とは違って、音楽とストーリーのバランスが拮抗する進化した作品です。また、今回のテーマに「越境」があります。東洋と西洋、ヴァイオリンと和楽器、最先端技術と歴史絵巻が交錯する「越境」の妙を、ぜひ劇場で体感していただけたらと思います。

作曲、原作、演出まで一人で挑むと決めたものの、並大抵なことではありませんでした。その時、力になってくれたのは娘です。私は聞き手が必要な人間。話すことでアイデアが整理されたり、膨らんだりして創作が進みます。娘はいつも忌憚ない意見を聞かせてくれて、私の思いつかなかったアイデアもくれました。娘は今回の舞台の出演者でもあります。