今は絵を描くことが一番好き
花音 「子どもだから無責任に言えるだけです。お母さんは仕事をする相手を思いやったり、締め切りがあったりして譲歩することに慣れてしまっています。でもお母さんが迷っている時、私は『いい舞台を作る』という観点だけでアドバイスができるので、いいのだと思います」
この度の舞台は、娘のエッセンスが散りばめられたものになりました。娘は私にとって、本当にいい聞き手なのです。一方、私は娘に、勉強や生活態度など、ああしてこうしてと言ったことはほとんどありません。ただ、幼い頃習わせたバイオリンだけはダメでした。娘が弾いているのに、自分が弾いているような感覚に陥って、口を出してしまいました。
子どもを持つ前は、音大仲間が「自分の子に自分の楽器を習わせたくない」と言っていた意味がわからなかったのですが、今はわかります。私は娘に自分の好きなことをやってほしい。娘は表現するのが好きで、演じることも興味があったようなので、私からお願いして今回の舞台でガラシャの幼少期を演じてもらうことにしました。
花音 「一度は断ったのですが、何度か頼まれて引き受けることにしました。舞台で演じることは嫌いではなく、不得意なことをやるのではなければ、人前で何かすることで緊張するほうではないかもしれません」
娘が小さい頃に私が自分のコンサートから戻り、感想を聞いたら「私が、あっち(舞台)に立ちたかった!」と言われたことがあります。
花音 「覚えてないですね(笑)。演奏家になりたいというのは思っていません。演じることにも興味はありますが、今は絵を描くことが一番好きです」