土俵は無限大。前も後ろも横もある
怪我や病気で番付を落としたのと、新型コロナのガイドライン違反での出場停止での陥落は一緒にはできない。しかし、阿炎は、幕下まで落ちてから今場所は前頭15枚目となり、誰も予想しなかった優勝争いにからんだ。猛反省の結果が12勝に繋がった。幕下では同じ違反で出場停止となっていた元幕内の竜電が幕下47枚目で全勝優勝している。
今年は物言いが多かった。俵にのった足の踵が蛇の目(円形の土俵を囲む俵の外の砂)に着いたかの問題が目立った。私は絶対に大相撲に取り入れて欲しくないものがある。「AIによる勝敗判定」と「踵がついたのを感知する蛇の目センサー」である。土俵下の審判員は全員元力士なので、土俵に上がると「大量に塩をまく水戸泉(錦戸親方)だ」「投げが凄い魁皇(浅香山親方)だ」と懐かしい。今後もずっとノソノソと土俵に上がり、その姿を披露してほしい。
11月場所のNHKテレビ解説で聞いた最高の学びの言葉は、14日目の荒磯親方(第72代横綱・稀勢の里)の「土俵は無限大」である。13日目まで7連敗し3勝10敗の輝けない前頭14枚目・輝への発言だ。荒磯親方は、「土俵は前だけでなく後ろも横もある。輝はそれを使っていない」と言った。これは人生にも通じる。私は悩みがあるとそればかり考えて、すぐ絶望してしまう。もっと思考の範囲を広げなくてはいけないと思った。
来年、その無限の土俵に立つ新横綱が誕生する可能性が想像もできない。何か起こるか分からない世の中で、年6場所、大相撲が開催されるだけで満足しようと決めた。