2021年11月14日、福岡県の福岡国際センターで始まった大相撲11月場所は、一人横綱となった照ノ富士の全勝優勝で幕を下ろした。11月場所は怪我や出場停止から復活を果たした力士たちの「再生のドラマ」だったそう。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が、今場所もテレビ観戦記を綴ります
横綱の責任を一人で果たした
大相撲1年納めの11月場所は、横綱・照ノ富士が14日目に6回目の優勝を決め、千秋楽にも勝ち自身初の全勝優勝を果たした。年6場所のうち照ノ富士は3月、5月、新横綱で迎えた9月場所、今場所と4回優勝した。「優勝するのはあたりまえ」という横綱の責任を一人で果たした。
千秋楽の照ノ富士の対戦相手は、12勝の大関・貴景勝。立ち合いの瞬間の貴景勝は、感動するほど強気の顔だった。貴景勝は、照ノ富士を突いたり、押したりで攻め、途中で両者の動きが止まり、「闘志の見つめ合い」になったりもした。しかし、「不動心」「受けて立つ」「自分の大きな体を活かす」を貫いている照ノ富士の前では、貴景勝の闘魂が通じず、押し出された。花道を引き上げる貴景勝の顔は、悔しくて泣きそうにも見えた。
その前の取組で大関・正代は、関脇・御嶽海にあっさり負けた。一人横綱の千秋楽の相手は、闘志が分かりにくい謎の正代より、闘志が分かりやすい貴景勝がふさわしい。
正代は9勝6敗、御嶽海は11勝4敗で今場所を終えた。期待をうらぎると言われるふたり。しかし、真のファンは、ふたりがその上へ昇進することをあきらめない…と思う。
前頭筆頭の大栄翔と若貴景、前頭4枚目・遠藤、前頭15枚目・千代丸は千秋楽に勝ち越した。敢闘賞は前頭15枚目・阿炎(3回目)と前頭2枚目・隆の勝(2回目)が選ばれ、技能賞は前頭7枚目・宇良が初受賞した。