インターフォンは鳴らなかった
本当はね、期待してました。家の前に20人ぐらいスタッフが集まって、「上沼さーん!」とインターフォンを押しながら私を呼ぶ。私が出て行って、「こんな結果になったけど、みんながんばりなさいよ」と言うと彼らはオイオイと男泣きする。よく青春ドラマにあるじゃないですか。そんな場面を思い描きながら、ずっと待ってました。でもいっこうにインターフォンは鳴りませんでした。未だに鳴っておりません。
青春ドラマ、あれは嘘ですね。青春のようにひとつの番組をみんなで作ってきたというのは、自分の空想でしかなかった。ライフワークのように思っていた仕事をこういう形で失った衝撃は大きかったです。
気力を取り戻すのに1年かかりました。白浜の家は5メートル先が海で、いつでも飛び込めたんですよ。でも「ここで死んだらアホやな。今は辛抱しよう」と。あんなに辛抱強い自分は初めてでした。
それでも1年が過ぎて、ちょっと強くなりましたね。「人間なんて信じたらあかんわ」ではなく、前を向こうという気持ちが出てきました。
実は年内にYouTubeで番組を始めようと計画してるんです。これからは指定されたことを使命感でするのではなく、自分のしたいことを提供したい。16歳から働いてきたので、私はクラブ活動もキャンプファイヤーも経験していません。趣味を楽しむ時間もなかった。かわいそうといえばかわいそうなんです。
したいことはいっぱいあります。得意なおしゃべりを交えた人生相談もいいし、スタジオを借りて大好きな昭和歌謡を歌い続けてみるとか、料理のなかでも「あっちゃー」というようなアイディア料理を紹介するとか。今の私の等身大、ありのままを見ていただくような内容を考えています。