心配性な性格が「現在進行形」で前向きに
こんなふうにお話をすると、いつもアハハと笑っておおらかに生きている人間なのかと思われるかもしれませんが、そうでもありません。子どもの頃から、怖がりで心配性。あれこれ考え始めると、いまだに不安に襲われることもありますよ。
私が怖がりなのは、5歳のときに母を病気で亡くしたからです。いつまた、自分にとって大切な人が突然いなくなってしまうかもしれない。そんな不安を常に抱えていたので、少しでも悲しいことがあるとすぐに泣き出すような、いくじのない女の子でした。
ただ、10歳のときに第二次世界大戦が終わり、日本じゅうの空気がはじけて自由になったことで、その解放感にどんどん巻き込まれていったのです。アメリカやフランスから入ってきた映画が次々と公開され、進駐軍放送のラジオからは聞いたことのないシャンソンやジャズが流れてくる。外国の本も翻訳されて読み放題。
それまで自分が知らなかった新しいもの、珍しいものに対して好奇心を持てば持つほど面白いものに出会える、という経験を幼いながらに味わった。まだ食べものも満足になかったし、防空壕に住んでいる友達もいたけれど、それでも、ワクワクする楽しい世界がこれから生まれてくるんだと、心がパーッと明るくなっていきました。
中学に上がり、戦前は禁止されていた英語の授業で「現在進行形」という言葉に出合ったのも、自分が変わる大きなきっかけになりました。そう、「Be動詞+ing」というあれです。何よりも「現在進行形」という言葉がいたく気に入って、そうだ、これからは前を向いてどんどん進んでいこう、と。そこから今にいたるまで、ずっと私の「現在進行形」は続いています。
性格的におっちょこちょいなところもありますから、常に順風満帆で歩んできたわけではありません。人間関係での失敗なんてしょっちゅうでしたし、3歩進んで2歩下がるなんていうことも。ただ、12歳のときに自分の中に宿った「前を向いて生きていこう」というエネルギーは、一生、私の中から消えることはないでしょう。そして、その原動力となっている好奇心と想像力、これが今でも生きる力になっているのです。