「書いていれば心がワクワクして、生きることに退屈しない。その気持ちは80代になった今でも変わりません。書き足りたとか、書き尽くしたとは思いませんね。」(写真:『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』(著:くぼしま りお・KADOKAWA)より)
子どものみならず幅広い世代の読者を魅了して半世紀。その作品数はじつに250を超える。近年は、「好きなもの」に囲まれたライフスタイルも人気に。今なお毎日書き続けるエネルギーの源は──(構成=内山靖子)

80代になった今も、「書く楽しさ」は変わらない

35歳のときに最初の本を書いてから、今日までの約50年間、毎日ただコツコツと、ひたすら物語を書き続けてきました。

自分の手で何かを創り上げていくのって楽しいでしょう。書いていれば心がワクワクして、生きることに退屈しない。その気持ちは80代になった今でも変わりません。書き足りたとか、書き尽くしたとは思いませんね。

たとえ「歳をとったら、書くものが以前よりイキイキしていないよね」と思われたとしても、80代なんだからしょうがない(笑)。その年齢、年齢での〈いいもの〉が必ず自分の中にあるはずです。いくつになっても、書けば書くほど自分の世界が広がっていく、それが何より楽しくて。

「自由な生き方」なんて褒められたものじゃありません。私は相当にワガママなんですよ(笑)。他人の意見はあまり聞かないし、締め切りも決めずに、自分の書きたいものを納得いくまで書いていく。なぜならば、私は「あらかじめ」という言葉が大嫌い(笑)。だから、結末もテーマも決めずに書いていくのです。「こんなことが起きたら、楽しいだろうなぁ」と感じる自分のワクワク感だけで。

だって、あらかじめテーマを決めて書いてしまったら、読者への押しつけになってちっとも面白くないでしょう。読んでくれた方の中に何かが残れば、それがその方にとってのテーマですから。読者の一人一人に「これは私のための物語」と感じてほしい。そういう物語を、私は生み出していきたいのです。

とはいえ、そんな私のせいでとばっちりを食い、ご迷惑をかけてきた方々が大勢いるはずです。「ママは自分勝手なんだから」と、うちの娘にもよく言われます。それでも、他人の目なんて、あまり気にしないで生きるほうがいいような気がします。「自分らしさ」は自分だけが理解していればそれでいい。そう考えながら、今も次の新作を書いているところです。