おふくろ、見ているかい
やりきれない気持ちで立ち尽くしていると、そばにいた妹が言いました。
「最後にさよならをしていくなんて、やっぱり母ちゃんは、あんちゃんのことが大好きだったんだねぇ……。ズルいなぁ」
その一言で、ハッと目が覚めました。
どんなときだって、笑顔で舞台に立つ――。
役者・竹沢龍千代との約束を守るべく、私は涙をぐっとこらえて、拍手の中へと飛び出していきました。
あの日から20年以上。私はいまも変わることなく、全国各地の大劇場の舞台に立ち続けています。
――おふくろ、見ているかい。俺はまだまだ頑張ってるよ。
幕が上がる前、時折まぶたを閉じてそっとつぶやく私を、天国のおふくろは褒めてくれるでしょうか。
※本稿は、『人生70点主義―自分をゆるす生き方』(講談社)の一部を再編集したものです。
『人生70点主義―自分をゆるす生き方』(著:梅沢富美男/講談社)
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