困難やアクシデントもチャンスに変えて

普段の買い物も、いわゆるシニア向けの店には絶対に行かない。「だってそこで買ったら、とたんにおばあさんになってしまいますもの。若作りとは違うけれど、自分が楽しいと思う服、面白いと感じるものしか私は身につけたくないんです」。

木村さんは店での接客中、お客さんが着ている服が似合っていないと感じたら、正直に指摘する。「スタッフには『そんなにズケズケ言わないで』と怒られます(笑)。でも髪が白くなってきたら、グレーや黒の地味な色より、赤やピンクのビビッドな色のほうが絶対に素敵。

アクセサリーも、薬指にちっちゃい地味な指輪をポツンと1つするより、おもちゃみたいにおっきなリングを人差し指や親指にしたらどうですかって。『え、ここに?』と驚かれても、実際にやってみていただくと『楽しいわねえ』と、皆さん喜んでくださいます」。

新型コロナによる緊急事態宣言でお店に来る人が激減してしまった時には、スタッフに勧められて、ネット通販を始めた。「私がインスタで着た商品を気に入ったら、スマホでポチッと買えるのが楽しいんじゃないかと。これまで神戸には来られなかった遠くのフォロワーさんにもお勧めできるので、コロナの功名? と喜んでいます」と明るく笑う木村さん。困難やアクシデントも次のチャンスに変えていくパワーが、若々しい魅力を支えているのかもしれない。


ルポ・小さな一歩を踏み出して「いま」に夢中
【1】定年後飛びこんだ劇団で、おのれを捨てて演じる自分に驚き《小春さんの場合》
【2】孫の一周忌に聞こえた声をきっかけにブックカフェを実現《江幡さんの場合》
【3】フォロワー9万人。79歳で始めたインスタで世界が広がった《木村さんの場合》