昔の戦友に再会したかのような感慨を

その大家と新人の輪の中に白い大輪の花が咲いたような横顔を見せているのは、ペギー葉山さんだった。

どうしてペギーさんが直木賞の受賞パーティーに顔を出しているのだろう、と、不思議に思う人たちも少なくなかったにちがいない。

私も当日まで、彼女が受賞パーティーに駆けつけてくれるとは予想もしていなかったのだ。

それだけに彼女の義理堅さが、ひとしお身にしみた感じだった。

私はペギーさんに関しては、ほとんど何も知らない。出身も、経歴も、家庭の事情も、歌のキャリアさえ知らなかった。仕事でたった二度、おつきあいをしただけの間柄だったからである。

しかし、それでも私はペギー葉山という歌い手さんのことが、記憶に深く刻まれていたのだろう。受賞パーティーの席で顔を見たとき、昔の戦友に再会したかのような感慨をおぼえたのだ。

私は大学を途中で飛びだしてから10年ちかく、さまざまな職業を転々としながら過ごしてきた。ある意味でジャーナリズムの底辺を這いずり回って生きていたのだ。そしてなんとか物を書くことで生活できるようになったのが20代の後半だった。ラジオやテレビの仕事をこなしているあいだに、次第に作詞の依頼がくるようになったのである。