カナダのケベック州に暮らす一家の、14番目の末娘として生まれたアリーヌ。家族は幼い彼女の特別な才能に気づく
(c) Rectangle Productions/Gaumont/TF1 Films Production/De l'huile/Pcf Aline Le Film Inc./Belga

少女時代から演じた理由は

かくして私は、セリーヌ・ディオンの人生をもとにした映画『ヴォイス・オブ・ラブ』の脚本を書き、監督し、彼女の5歳から今に至るまでを一人で演じたのです。過去に私が監督を務めた5作品は、いずれもどこか風刺的で皮肉っぽいところがありましたが、この作品においてはセリーヌにまっすぐに向き合っています。

唯一無二の存在であるセリーヌに敬意を表し、劇中の主人公はアリーヌ、夫はギィ=クロードというフィクションの人物にしていますが、彼女に関するありとあらゆる資料に目を通して、その人生に寄り添いました。

子役を使わず5歳から演じているということに、日本のみなさんは驚かれるかもしれませんね(笑)。私は、30年続けている一人芝居で、毎回必ず少女を演じているんです。3歳のこともあれば8歳のこともありますが、演じているのは、私自身がそうではなかった少女。舞台では何歳にでもなれるし、なりたかった自分にもなれる、そこにワクワクするんです。

そんなに大きなあなたがどうやって? と思うかしら(笑)。映画の撮影では2つの手法を使いました。1つは、単純に私はそのままのサイズで、まわりのものを大きくするというアナログなやり方です。教室のシーンでは、大きな教室に大きなイスや机を並べて、私が小さく見えるようにしました。

もう1つはその反対。特殊効果チームの力を借りました。たとえば、私が見上げている姿をまず撮り、CGを使って小さくして、相手役を大きくする。こうすれば子どもが大人を見上げている図になります。

地元の名プロデューサーであるギィ=クロードの尽力により、12歳でデビューを果たしたアリーヌは瞬く間に世界で活躍する歌姫へと成長する
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