「私は彼女の人生というものを、ちょっとロマンチックに、ちょっとスタイリッシュに、そして愉快に描きました」
(c) Laurent Humbert / H&K

カンヌ映画祭に揃った2つの家族

この作品を第74回カンヌ国際映画祭に出品できたことは本当に大きな喜びでした。上映直後にスタンディングオベーションが起こったことにはもちろん感激しましたが、私がカンヌで感動したことは2つあります。

1つは、日頃まったく私の作品を観に来てくれることのない姉と妹が、上映会に足を運んでくれたこと。

もう1つは、私にとって何よりも嬉しいことでした。今回の作品を撮り終えた時に、私はケベックの俳優たちに対して、まるで新しい家族ができたような感覚を持ったのですが、その新しい家族と私の本当の家族が、カンヌの地で巡りあうことが叶ったのです。

『ヴォイス・オブ・ラブ』は、私のキャリアのなかで一番重要な作品になるのではないかと思います。セリーヌを絶対に裏切らないために、慎み深さをキープしながらアリーヌを演じることに、100%以上の力を振り絞って全力投球しました。このハードルは非常に高かったけれども、それができたのではないかと思うのです。

これまで、失敗したことは数知れません。実はケベックで初めてワンマンショーを開いた時、ショーが終わらないうちに観客が次々に席を立ってしまったという苦い経験もあります。あの時は、もう二度と行くもんかと思ったケベックですが、今は、もう一度この地でショーを開催したいと思っています。

大きな心残りはひとつだけ。私は26回も日本に行ったことがあるほど日本通なのに、あろうことか、この作品の公開に合わせて訪問できないこと。コロナが落ち着いたら必ず行きます。それまで、日本のみなさんに映画を楽しんでいただけたらとても嬉しいです。