3人の子どもを育てながら、アリーヌはヨーロッパツアーやラスベガスでのショーを続けた
(c) Rectangle Productions/Gaumont/TF1 Films Production/De l'huile/Pcf AlineLe Film Inc./Belga
(c) photos jean-marie-leroy

笑いのなかにこそ私らしさがある

こんな作品を撮った私について、ですか? 興味を持ってくださるのはとても嬉しいことです。私はフランスでは女優として作品に出る側であり、監督として作品を撮る側でもあります。

「笑わせること」は、私が家族のなかで、社会のなかで、自分の居場所を見つけるために欠かせないものでした。私が育った家庭はどちらかというと堅苦しく、緊張感が漂う雰囲気で。母にちょっと鬱っぽいところがあったこともあり、家族のなかに「笑い」がなかった。

私はその空気を和らげようと必死になり、家族の前で面白いことを言ったりやったりしたんです。すると、父や母の笑みがこぼれる、ふっと空気が柔らかくなる。その快感を12歳の頃に知ってしまったんです。これが私のやるべきことだ、生きていく術だ、あの時そんなふうに感じていたような気がします。そして、大人になった今も笑わせることをずっと続けている。笑いのなかにこそ、私らしさがあると思っています。

ですから私は、自分がかかわるあらゆる作品において、笑いを取りにいきます。笑わせること、遊び心があること、それは私にとってファンタジー。笑いといっても一通りではなく、ちょっとしたおかしみ、風変わりな面白さ……。ゲラゲラ笑うばかりが笑いではありません。

たとえば、この映画の主人公のアリーヌと実在のセリーヌ・ディオンの間には、当然違いがあり、そのことから生まれるファンタジーがある。私はそれを大切にしたかったのです。

だって、考えてもみてください。もしもあなたがセリーヌ・ディオンの人生を知りたいなら、ウィキペディアを読めばすむことじゃないですか。私は彼女の人生というものを、ちょっとロマンチックに、ちょっとスタイリッシュに、そして愉快に描きました。もちろん想像を膨らませた部分もありますよ。ファンタジーを盛り込むとはそういうこと。この映画では、私のやりたかったことがすべてできたと思っています。