結婚を強いた負い目と孫可愛さで…

ようやく息子は結婚し、同時に1児の父となった。連れ子が小学校入学というタイミング。私は、嫁と孫が同時にできて、何となく、嬉しいような……。

しかし、喜んでばかりもいられない。息子はフリーのカメラマン。収入は安定せず、何度かお金の相談をされていた。私は息子の結婚や、孫ができた状況に浮かれていて、「母さんがなんとかするから」と、安易に口走ってしまったのだ。それが、後にこれほど大変な思いをすることになるとは……。

私は夫に内緒で、自分の貯えのなかから息子を援助することに。ところが、結婚の翌年に1人、2年後にまた1人、と孫が生まれた。俄然、息子一家の生活費は増大。私が貯えていたお金は、瞬く間に底をついた。

息子が要求する金額を払うには、これまで勤めていたスーパーのアルバイトだけでは間に合わない。早朝に病院で配膳の仕事も始めた。この時、すでに61歳。朝4時起きは、かなりキツい。だが、背に腹は代えられないのだ。

風雪に耐えること、早6年。夫の協力はあるものの、クレジット会社に借金もできてしまった。まさに自転車操業。毎月請求書が届くたびに、さっと目を通しては家族に見られないようすぐに隠す。夫もこれまで勤めていた会社で、シニアバイトとして働いている。だが、その賃金と年金では追いつかない現状だ。

嫁はそんな状況を知ってか知らずか、息子との関係が良くない。夫婦喧嘩が警察沙汰となり、警察に夫が呼ばれて仲裁したこともあった。嫁は、毎年春先になると情緒が不安定になるようだ。その都度被害に遭うのは、3人の孫たち。見かねて私が預かり、喧嘩が収まると息子が迎えに来る。

私が息子に結婚を無理強いした、と言えなくもない。その負い目と孫可愛さも手伝って、ついつい援助をしてしまう。息子夫婦に別れてほしくはない。今はハラハラしながら、息子一家を見守っている。

でも、このお嫁さん。優しいところもあって、母の日や、私や夫の誕生日には贈り物をくれる。誰にでも、長所はあるものだ。


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