のんちゃんがわが家の一員に

佐藤さんの話によると、前年の冬に同じキジトラ柄のオスとともに、裏山から下りてきたようです。

「2匹とも2歳くらいで、ガリガリに痩せていてね。1匹はしばらくするといなくなってしまい、のんちゃんだけ残ったんだよ。耳をV型にカットされているから、捕獲、避妊手術をしてから放された猫なんじゃないかしら」

佐藤さんは犬や猫の保護活動をしていて、自宅には犬2匹と猫5匹がいました。のんちゃんは犬とは仲がいいのに、どういうわけだか5匹の猫とは仲が悪かったそうです。

なんというグッドタイミング! 私の胸は高鳴りました。それと同時に、生きることで精いっぱいの高齢者が、猫の命に責任を持てるだろうか? という不安がよぎったのも正直なところでした。

「今夜、息子と相談して返事します」

その夜、長男と話しました。年の順からいって私が先に逝くだろう。責任を持ってあなたは面倒を見られるの? と迫ると、息子は真剣な顔で「面倒を見る」と返事をしてくれました。そうしてのんちゃんはわが家の一員になったのです。