「美代ちゃんが私の語り部になってね」
希林さんは亡くなってから評価がさらに高まって、世間からちょっと崇められすぎているなと……。人間くさくて、ミーハーで、チャーミングな人でした。
ワイドショーが好きで、よくテレビを見ながら電話をかけてきたんです。「ねぇ、8チャンネルを見てごらん! あの女優、やったね」。……整形したわね、という意味です(笑)。映画やドラマの感想から、時事ネタ、芸能人のゴシップなど下世話なことまで、希林さんとのおしゃべりは、私の日常に欠かせないものでした。
希林さんが亡くなり、寂しさを感じていたとき、新たな出会いに恵まれました。
脚本家の中園ミホさんから紹介された作家の林真理子さん、聘珍樓(へいちんろう)のマダム・林淳子さん。みんな歳も近いし、話題が合います。井戸端会議ができる相手が、ここにいた! 急速に仲良くなった私たちは、月に1回は集い、好き勝手しゃべって笑い合っています。
そんな雑談の中で生まれたのが、21年に発売された私の初めての著書『ひとりじめ』。希林さんとの思い出を綴った本です。
実は生前、希林さんに「美代ちゃんが私の語り部になってね」と言われていて、それがずっと心の隅に引っかかっていました。亡くなった直後から、「希林さんについて書きませんか」という話はきていたけれど、とてもそんな気にはなれなくて。希林さんとの思い出を振り返ってみようと自然に思えるまで3年かかりました。
とはいえ、私はなかなか行動にうつせない性質。いつもの会合でその話をしたら、「いいじゃない」と盛り上がりました。あれよあれよという間に、真理子さんが出版社まで紹介してくれて、引くに引けない状態に。背中を押されてというより、思いきり腕を引っ張られた形で出版に至りました(笑)。これもご縁ですね。