年下の友人たちから刺激を受けて

友人の数はそんなに多くありません。頻繁に会うのは5、6人がせいぜい。〈広く浅く〉より、〈狭く深く〉が自分に合っているようです。

最近は、年下の友人たちからも刺激を受けています。長澤まさみちゃんとは定期的に食事をする仲。今や大女優さんですが、制服で撮影現場に来ていたデビューの頃から知っているので、まさみちゃんも私といるとラクなんじゃないかしら。突然LINEで「ごはんー!!」と一言。ごはん食べに行こうという意味です。かわいいでしょ? レストランで会ったり、うちに呼んで私が手料理をふるまったりすることもあります。

 

『ひとりじめ』(浅田美代子・著/文芸春秋)

歌手のMISIAさんとは、私が動物愛護活動の一環で、オークションを募ったときに協力してくれたのがきっかけで意気投合しました。彼女はアフリカの子どもたちを支援するチャリティ活動を続けています。まさみちゃんもMISIAさんも、素顔はほんと、自然体。だから気が合うのです。

若い頃に希林さんによく言われました。「普通でいなさい。じゃなきゃ、普通の役を自然にできないよ」と。女優だから偉いわけでもない、お付きの人がいないと買い物もできないようになってはダメ。ちゃんと生活することこそ大事だと。

だから私は、もちろん買い物は自分で行きますし、友だちとの旅行も計画を立てて、東京駅で待ち合わせ。仕事以外は、いたって普通の生活をしています。

ひとり暮らしでも料理は手を抜きません。仕事で遅くなると、お惣菜を買っちゃおうかなと思うこともあるけれど、市販のものは味が濃くて甘いでしょ。だから、自分で作っています。食いしん坊なので、おいしいものを食べるために手間をかけるのは苦にならないんです。

希林さんも、まさみちゃんも気に入ってくれたのが、旬の野菜を茹でた温野菜サラダ。カボチャやゴボウ、オクラ、ハスなどを、それぞれの野菜の食感を損なわないように、火を入れる時間を変えて、ベストな茹で加減にするのがポイントです。

落ち込んだり悩んだりしたときも、料理は気分転換になりますね。悩んでも考えても、結局いい答えは出ないもの。むしろ悪いほうに考えて暗くなってしまうことすらある。だから私はもう考えない! 料理したり、犬を散歩に連れて行ってみたり、犬をシャンプーしてみたりして気を紛らわしています。

浅田美代子「私を老いの恐怖から解放した樹木希林さんの『老いもおもしろがれ』の言葉。65歳の今はシワが刻まれた顔も受け入れて」〈後編〉につづく