「毎日(犬たちと)散歩しているうちに季節の移ろいを感じ、徐々に悲しみが溶けていった気がします」(撮影:大河内禎)
2021年は、映画『朝が来る』で助演女優賞を受賞し、樹木希林さんについて綴った初の著書『ひとりじめ』を上梓するなど、刺激的な年だったと振り返る浅田美代子さん。今の自分があるのはすべて縁の力のおかげと語る理由は。(構成=村瀬素子 撮影=大河内禎)

浅田美代子「樹木希林さんはワイドショーネタで盛り上がるおしゃべり仲間。死後に崇められすぎているけれど、本当は人間くさくてミーハーな人」〈前編〉よりつづく

最愛の母の死をきっかけに

大切な人を亡くした悲しみや喪失感は、気分転換では埋まりません。それを癒やすのは時間しかないですね。

私のライフワークである動物愛護活動を始めたきっかけは、最愛の母の死でした。母が亡くなってひとりになったとき、私を支えてくれたのが飼っていた2匹の犬。シーズー犬の桃太郎と柑太郎だったからです。

当時は仕事以外は家に引きこもるほど悲しみに沈んでいました。でも犬たちがいてくれたから、ごはんをあげなきゃ、散歩に連れて行かなきゃと自分を奮い立たせることができたのです。毎日散歩しているうちに季節の移ろいを感じ、徐々に悲しみが溶けていった気がします。

柑太郎が17歳で旅立った後、新たに犬を迎えたいと思いました。動物の殺処分の現状に心を痛めていたので、あの子たちを救うために何かできないかと思い、保護犬を飼うことにしたのです。引き取ったアヴィは、生まれてからずっと飼い主から虐待されていたそうで……。私のことも警戒して、そばに寄ってこようとしませんでした。

ただ、根気よく世話をして、愛情を注いだら、相手も心を開いてくれるんです。ある日仕事から帰って玄関を開けると、アヴィがしっぽを振って出迎えてくれて……涙が溢れました。