老いの恐怖から解放された理由
50代の頃は、老いることが怖かったんです。シワが増え、顔がたるんでくるのはやはりイヤなもの。でも、そんな変化を「おもしろがりなさい」と希林さんに言われたんです。目尻にこんなにシワが! イヤだイヤだ、どうしよう、じゃなくて、年齢に沿って変化していく姿をおもしろがれ、と。
役者ならば顔をいじるな、とも言っていました。整形して美しさを作り込むと、その人なりの個性が消えてしまうし、年相応の役ができなくなる。たしかに、そうかもしれません。希林さんに諭されて、歳を重ねていく自分をおもしろがって観察するうちに、私も老いの恐怖から解放されたように思います。年相応の清潔感や美しさがあればいいんじゃないかしらって。
65歳の今は、映画館のスクリーンにノーメイクの自分の顔がドーンと映っても、気にならなくなりました。シワがくっきり刻まれていても大丈夫。その役には、その顔がふさわしいわけですから。
役者としてオファーが途絶えることがなかった希林さんに、「どうやって仕事を選んでるの?」と聞いたことがあります。そしたら、「来たもの順よ」と言われて(笑)。
たしかに、希林さんは数々の名作で重要な役を演じていますが、一方で、なぜこの映画に? こんな役に? と首をかしげるようなこともあります。どんな役柄でも、二言三言しかセリフがなくても、独特の存在感を放つのが希林さんですけど。