慰謝料は取れても心は癒えない
裁判は時として残酷です。
相手の弁護士から「夫が不倫をするまでは、月に何回ぐらい肉体関係がありましたか?」「最後にしたのはいつですか?」と聞かれた妻は、今にも倒れそうになるのを必死で耐えながら小声で答えていました。
しかも、この裁判は公開裁判のため、筆者以外に裁判マニアらしき人も傍聴していて、いわば、まったくの赤の他人や自分の親族の前で、性生活を答えるのです。ちなみに、離婚裁判は必ずしも公開裁判ばかりではなく、双方の弁護士を交えて非公開で行われるケースもあります。
恐らく妻は人としてのプライドがズタズタだったことでしょう。しかし、不倫の慰謝料請求裁判です。「愛人と夫が不倫をするまで夫婦生活は円満だった」ことを主張する必要があるため、勇気を持って答えたと思われます。
妻は不倫が発覚後、体調を崩して実家に帰っていましたが、あろうことか、夫は裁判時に妻と暮らしていたマイホームで、愛人と暮らしていました。
頭金も妻が半分を出していた家に、妻は戻ることもできなくなっていました。また育児休暇が明けたものの、体調も良くないこともあって、退職することになりました。
このケースは、裁判所は夫と不倫相手に合計で450万円の慰謝料を命じ、振り込まれましたが、妻の心の傷はすぐに癒えることはありませんでした。