外国人労働者の子どもたちの日常に焦点をあてたドキュメンタリー番組を見ていたマリさん。大変な境遇にあっても、撮影隊を和ませるような洒落や機知のあるジョークを口にするお嬢さんを見ているうち、自分の過去を思い出し――。(文=ヤマザキマリ 写真=山崎デルス)

ドキュメンタリー番組を見て自分の過去を思い出し

いつだったか、日本に暮らす外国人労働者の子どもたちの日常に焦点をあてたドキュメンタリー番組がテレビで放映されていた。漫画の作業をしながら、音声だけ聞き取るような曖昧な視聴だったのでうろ覚えの記憶だが、フィリピン国籍のシングルマザーに育てられている中学生の娘が不登校になってしまったとか、確かそんなような内容だった。

外で働く母親には娘とゆっくり向き合う時間もなく、勉強についていけない娘は学校に通う意欲をなくしている。

現代の日本において、彼女のような境遇にある外国人家族の子どもたちは少なくないというナレーションにやるせなくなりつつも、興味深かったのは、テレビカメラを向けられているそのお嬢さんがまったく悲しそうに見えなかったことだ。

時々撮影隊を和ませるような洒落や機知のあるジョークを口にし、「あなたたちが思っているほど大した問題じゃない」とでも言わんばかりに楽しげに振る舞っている。周りを明るい気持ちにさせようとする彼女の姿を見ているうちに、ふと自分の過去を思い出していた。