「対談を読むと、私はかなりずけずけと、先生の死について問うている。それほどお元気だったし、先生にとって死はもうそこに来ている親しい友人のようであった」
2021年11月9日に、作家の瀬戸内寂聴先生が亡くなられました。大正11年に誕生された寂聴先生は、2022年5月15日、100歳を迎えるはずでした。作家の後輩として親交の深かった林真理子さんが、瀬戸内さんの著書に掲載する対談のために、2021年6月30日に京都の寂庵を訪れました。お話も弾み、瀬戸内さんから「私の評伝は林さんが書くのよ」というお言葉がありましたが、その後体調を崩され、取材は叶いませんでした。寂聴先生のご逝去を受け、林さんが寄稿してくださった『婦人公論』2022年2月号の追悼文を配信します。          

死はもうそこに来ている親しい友人

たぶんこれが、先生最後の対談になることであろう。

「亡くなってさっそく掲載するなんて、あざとい」

と言う人がいるかもしれないが、先生がお元気なうちにと、正月用の大型企画として行われたものだ。コロナの影響で先生とは一年半おめにかかれず、やっとこの日となったのだ。

久しぶりであったが、おめにかかった時は、まだ先生はとてもお元気で、足もしっかりしていらした。撮影の時はちゃんと歩いて、寂庵の庭に立たれた。

この対談を読むと、私はかなりずけずけと、先生の死について問うている。それほどお元気だったし、先生にとって死はもうそこに来ている親しい友人のようであった。忌むべき相手ではなく、いつでも自分を迎え入れてくれるやさしい存在になっていたのだ。