記憶学習の後は、さっさと寝てしまう方がよい
このことから、(私が昔考えたような)寝る直前でなくとも、その日に得た情報は就寝中に整理されて定着すると言えそうですが、もう一つ大きな就寝前効果を挙げることができます。それは、記憶に逆向抑制がかからないという点です。
逆向抑制とは、あることを学んだ直後に別のことを学ぶと、先の学習が妨害を受けてしまうという現象です。眠ってしまえば、その後何も情報が入力されないため、眠りにつく前に入力した情報が守られるというわけです。
これは、注意すべき点でもあります。
というのは、せっかく就寝前に記憶したとしても、その後、「寝る前にちょっと一息入れよう」と、ネットの記事を見たりすると、今度はその情報が鮮明に残ってしまい、先ほど一生懸命に覚えたことが逆向抑制を受けて水の泡となりかねないためです。
油断は禁物です。メタ認知を働かせて、記憶学習の後は、さっさと寝てしまう方がよいでしょう。
ーーー
*1. 鈴木博之・内山真(2006)「睡眠と記憶向上」Brain Medical, 18, 1, 73-79.
*2. Wolfson, A. R., & Carskadon, M. A. (1998) Sleep schedules and daytime functioning in adolescents. Child Development, 69, 4, 875-887.
*3. Aserinsky, E., & Kleitman, N. (1953) Regularly occurring periods of eye motility, and concomitant phenomena, during sleep. Science, 118, 273-274.
*4. Boyce, R., Glasgow, S.D., Williams, S., & Adamantidis, A. (2016) Causal evidence for the role of REM sleep theta rhythm in contextual memory consolidation. Science, 352, 6287, 812-816.
※本稿は、『メタ認知』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
『メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる』(著:三宮真智子/中公新書ラクレ)
自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる「もうひとりの自分」。それが「メタ認知」だ。この「もうひとりの自分」がもっと活躍すれば、「どうせできない」といったメンタルブロックや、いつも繰り返してしまう過ち、考え方のクセなどを克服して、脳のパフォーマンスを最大限に発揮させることができる! 認知心理学、教育心理学の専門家が指南する、より賢い「頭の使い方」。