「両親には私がいるけれど、私には誰もいないので、自身の最後の最後をどうするかは、自分で決めて、専門家に託しておくつもりです」

 

プロの手を借りてゆとりができた

そんななか、ケアマネジャーさんのすすめもあって、両親を有料老人ホームに入れることを決意します。迷いがなかったわけではありませんが、条件の合うところを何ヵ所も見学し、介護のプロのみなさんの接し方を見て、私たちの先のことを考えて決心。両親には元気で長生きしてほしいし、心地よく安全に暮らしてほしいですから。

入居から4年ほど経ち、いま思うのは、施設に入れたからといって私の役目は終わりではない、ということ。私にとっては、プロのサポートを得て、どうやって親子の愛情を深めていくか、ということが大事なんです。

両親とも車椅子生活ですが、会話は普通にできるし、食べることもできます。だから毎朝電話で話をし、週に2回くらいはお菓子を届けたり、散歩に連れ出したり。母との散歩は楽しいですよ。若い頃からハンサムな男性が大好きだったんですが、今もハンサムなおまわりさんを見かけると声をかけたり。こういうところ、全然変わってない。

コロナが少し落ち着いてからは、外食にも連れ出せるようになりました。車椅子のため両親同時には無理なので、交互にではあるけれど、楽しいひとときです。先日は父と外出して、お酒も一杯だけ飲みました。施設では転倒の危険があるから控えているのですけど、私と一緒のときくらいはね。カーッと飲んで「ああ、うまいな」と喜んでくれて。

95歳になる両親がともに健在で食事や会話を楽しめる私は、なんて幸せなんだろうと思います。もう映画館に行くことができない両親が、テレビ番組に出ている私を見て喜んでくれたりするのもうれしい。

私にもゆとりが出てきたので、自分の老後についても考えるようになりました。おひとり様として老いていくので、やっぱりホームセキュリティは大切だなあとか、自立した暮らしを長く続けたいなら住まいをバリアフリー化するとか。これらの情報は自分のためにしっかり生かしていこうと思います。

両親には私がいるけれど、私には誰もいないので、自身の最後の最後をどうするかは、自分で決めて、専門家に託しておくつもりです。いくつになっても、子は親の姿に教えられますね。