「先生の作品では女性が明るくて前向きに性を楽しんでいるのが印象的でした。だから女の私が読んでも嫌な感じがしないんです。」(近藤さん)

近藤 この作品で1962年に芥川賞を受賞なさっています。

宇能 結婚したばかりだったから、授賞式を勝手に披露宴代わりにさせてもらってね(笑)。大学院生だった僕は、教授や助教授も招待して。貧乏していたので、女性とのデートは文壇のパーティを勝手に利用していました。野坂昭如や大島渚のパーティは女性に好評でしたね。

 

「あたし、~なんです」が書かれたころ

近藤 まあ、そうだったのですね。私、少し大人になってからは、『伯爵令嬢の妖夢』や『秘本西遊記』などエッチな作品にも手を出して拝読しました。官能小説といっても初期のころは文体に純文学の残り香が感じられ、「先生はこの後、どこへ向かっていくのだろう」と思いながら読んだ覚えがあります。(笑)

宇能 そうでしょう。あのころは僕自身もわけがわからなかった。思うままに書いたものが、あるときは純文学と呼ばれ、あるときは大衆文学と呼ばれる。自分では差がないつもりでした。まあいろいろと試しているうちに、編集者の「売りたい」気持ちと、こちらの「儲けたい」気持ちが合致してエロスのほうへ傾いた。

近藤 宇能先生といえば皆さんご存じの、「あたし、~なんです」という独白体の官能小説。70年代には雑誌や夕刊紙に多くの連載をお持ちになるように。