ひと塊がどんどん大きくなっていく
先日、眉毛にパーマ液を塗布された状態の私に、彼女が意を決した声色で「ジェンスーさんですよね」と話しかけてきた。なんだ、気づいていたのか。ちょっと名前が違うけれども。
私は「そうです」と答え、そこから彼女の身の上話が始まった。相談コーナーのあるラジオ番組を始めてからというもの、相談を受けることがとても多くなったので、こういうことはよくある。
聞けば、気になる男性が現れたものの、年下なので関係を進めていいものか迷っているらしい。
個人的な付き合いに進めることを迷うくらいだから、かなり年下なのだろうと私は察した。しかし、彼女の答えは予想に反したものだった。
「彼、3歳も年下なんです!」
たった3歳! 3歳なんて誤差の範囲だ。体重にたとえるなら、500グラムくらいしか違わない。
失礼を承知で尋ねると、彼女は24歳になったばかり。なるほど、相手はまだ大学生か。仕事を持つ自分と合うのか不安に感じるのも、無理はないかもしれない。
確かに、24歳の頃なら、私も3歳の年の差を気に病んだだろう。3歳年上はうんと大人に思えたし、3歳年下はまだまだ子ども、と。
3歳の年齢差を誤差と感じるようになったのはいつからだろう。30代後半くらい? いや、40代に入ってからな気がする。
40代になると、いろんなことが誤差になってきた。年齢はその最たるもので、上も下も2歳から3歳の年齢差はひと塊に感じる。40代後半になると、干支が一周まわるくらいうんと年下の人たちも中年のとば口に立つ。ひと塊がどんどん大きくなっていく。勝手に私のなかで。
気をつけなければいけないな、と思った。こちらは同じ塊のつもりでいても、向こうからしたらそうではないことが多々あるだろう。私がまだ30代半ばの頃、仲間のような口調で話してくる、うんと年上の先輩にギョッとしたことを思い出した。
現在は、干支ひとまわり上の先輩たちが、私を同じ塊と思ってくれていると嬉しく感じる。新たな「大人の仲間入り」をしたようで、なぜか胸が躍るのだ。もう十分、私は大人なのに。
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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇