オーディション当日に私が歌ったのは、中島みゆきさんの「悪女」。自分の名前と同じ「マリコ」という歌詞から始まる曲のため、インパクトがあるだろうと思ったのです。ところが結果はあっさり落選。プロデューサーの秋元康さんに「あざとい」と言われてしまいました。私の考えなどお見通しだったのですね。(笑)

とはいえ、せっかく芸能界に入るために東京に出て来たのに、何も成し遂げないまま福岡に帰るわけにはいきません。そこで、AKB劇場に隣接したカフェで働くことにしたのです。

劇場には、お客さんに好きなメンバーやカフェスタッフの名前を記入してもらうアンケート用紙があり、しばらくすると私に宛てた応援メッセージも見られるようになりました。当時、劇場に来てくださる私のファンは20人くらいだったのですが、アンケートの反応を見た秋元さんは、彼らを喜ばせるために「一度、篠田をステージに上げてみよう」と思いついてくれました。結果、私はそのたった1回のステージがきっかけでAKB48に加わることになったのですから、人生、本当に何があるかわからないですね。

AKB時代は「とにかく一生懸命やらなくちゃいけない。力を抜いてはいけない!」と、どんなことでも全力で臨んでいました。たまのオフも、勉強のためにお芝居を観に行くなど予定をびっしり入れ、ニューヨークに行った時も、観光そっちのけで現地のボイストレーニングに通い……。アイドルとしては、かなりせわしない日々を送っていたと思います。何もせずに過ごす休日などというものは私の辞書にはなく、むしろ「休みなんていらない。何も考えずに、ひたすら走っていたい」と思っていました。

それだけに、2013年にAKBを卒業した時は自分の中に燃やすものがなくなり、燃え尽き症候群のような状態に。在籍中は毎日パンパンのスケジュールでやってきたのに、いきなり週に2日もお休みがある生活になってしまい、ものすごく戸惑ったことを覚えています。