ダスティン・ホフマンの2度のアカデミー賞
私のプロフィールには「キャスティングディレクター」なる肩書が記されていますが、これは一体何だろうと思われた方も多いのではないでしょうか。このキャスティングディレクターについてのお話させていただきます。
キャスティングとは、演劇・映画などで俳優に役を振り当てること。プロデューサーや映画監督が俳優をキャスティングするのをサポートします。日本ではあまり馴染みのない名称かもしれませんし、本家アメリカでもそんなに昔からある仕事ではありません。
アメリカでは1920年代から50年代初期にかけてスタジオ・システムというものがあり、大きな映画会社、たとえば20世紀フォックスとかワーナー・ブラザースなどが専属的に俳優や監督、スタッフを抱え、製作・配給・興行までをコントロールしていました。当時の映画はクラーク・ゲーブルやケーリー・グラントといった白人のかっこいいお抱えスターを主役にして作られていたのです。
しかし戦後、ハリウッド映画の世界にも変化が訪れます。ある優秀な女性のキャスティングディレクターが1967年に『卒業』という映画の主役にダスティン・ホフマンを推薦しました。彼は身長が165センチしかなく、いわゆる美男子でもなく、それまでの映画スターとは明らかに違いました。
しかし、演技力の高さ、おもしろみは卓越していて、この作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。彼はのちに『クレイマー、クレイマー』(79年)と『レインマン』(88年)で2度のアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。
こうして以前の流れに風穴が開き、個性派の俳優が育っていくようになると、白人中心だった映画界で、黒人や東洋人も重要な役を占めるようになってきました。また、英語を話す俳優がいるのはアメリカだけじゃない、ということで、大事な配役は世界中の英語圏で探すことになっていくのです。
この傾向はここ15年ほどはとくに顕著で、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどの俳優が、アメリカ映画の主演を務めています。