今も多くの人の心に残る中村哲医師の活動
カントは言葉で平和の本質を語ってくれていますが、それを行動に移しているのが、パキスタン、アフガニスタンの人々を支えるお仕事をなさった中村哲医師ではないでしょうか。戦争について考えるにあたってまた大事な方として頭に浮かびました。
第二次大戦後、国と国とが宣戦布告しての本格的戦争は起きていません。起きていないというより、核兵器を持ってしまった人類は、戦争をしたら破滅するしかなく、戦争はできなくなったのです。
それでも、いわゆる内戦は後を絶ちません。アフガニスタンにも米国の軍隊が入り込みました。そこに暮らす人々にとっては、本格的戦争であろうとなかろうと頭の上から爆弾が落ち、家族のいのちが奪われることに変わりはありません。
武器を持って戦うこと自体嫌悪すべきことですが、近年は、戦場で戦士が戦うだけではなく、普通に暮らしている人のいのちや生活を奪うのですから本当にひどい話です。しかも最近はドローンを使い、無人で爆弾を落とすというとんでもないことまで行われているのです。こんなことってありでしょうか。とにかくやめて下さいと声を出さずにはいられません。
そんな中で困難に直面している人を助けるのは水と食べものだということに気づき、その支援を続けてこられたのが中村哲医師です。生きものという視点で考えてきた私にとっては、「武器でなく水と食べもの」という発想は本当にすばらしく尊敬します。
残念ながらいのちを落とされましたが、その思いは「ペシャワール会」の方たちが受け継いでいますし、中村医師の活動は今も多くの人の心に残っています。
「水は善人と悪人を区別しない」という言葉の大きさには、強く胸を打たれます。このように語りながら黙々と用水路をつくり自分たちで食べものを生み出せる社会づくりに貢献なさった姿は、まさに永遠平和の実現への具体的な姿です。