山本 そこで、もともと私の心にある「医学ってこんなにも面白いんだ」という純粋な感動を伝えたほうが、かえって多くの方の心に響くのではないかと方針をかえました。一旦、啓発したい思いを脇に置いて、頭を冷やして書いたのが『すばらしい人体』です。それでもついつい筆が滑って「こういうことには注意した方がいい」などと上から目線なことを書いてしまうのですが、それを編集者の方が軌道修正してくださって出来上がった本です。
坂井 学んだ知識が経験したことと共に練られていて、それを小気味の良い言葉で表現されているので、読んでいて実に気持ちのいい本でした。「いやいやこれはやるわいな」と思いましたよ。
山本 大変光栄です。私は坂井先生の書かれた本が大好きで繰り返し読んできました。『はたらく内臓』は、またそこに、素晴らしい1冊が加わった印象です。
坂井 ありがとうございます。
山本 医者としては、患者のみなさんが病気にかかる前に、この『はたらく内臓』のような体全体の理解を深める本を読んでくださっていたらいいのにと思います。一家に一冊と、おすすめしたい本ですね。
坂井 半分患者さん目線で書いたのがこの『はたらく内臓』です。私は一病息災どころか一年一病で、毎年のように何かがあるんです。どんな病気にかかっても、ある程度理解があると励みになって、精神的に乗り越えやすいと思うのですね。そんな思いがあって、本を書きました。私は内臓だけでなく筋肉や関節の不調にも見舞われるのですが、ある程度理屈がわかっていると「ここまでは無理をしても大丈夫」と、力を抜いてリハビリできるんです。力を抜くことができると快復も早い。
山本 そうですね。わかりやすい中にも専門的な知識が散りばめられているのが坂井先生の本の良いところです。小学生の息子も『はたらく内臓』を夢中になって読んでいました。