バレーボールのキャプテンを目指そう
組長になってしばらくすると、月組に二度目の『エリザベート』が回ってきました。
『エリザベート』は、ハプスブルグ最後の皇后エリザベートの波乱万丈の生涯を、
彼女を愛した黄泉の帝王トートの目線から描いた大人気ミュージカルです。
歌ですべてが表現されているといっても過言ではないほど、
歌で表現をする幅が大きく、作品としてもとても難しい作品です。
二度目とは言えど、前回とメンバーが違うので、二度目でも簡単ではありません。
そんな時、演出家の小池先生から「話したいことがある」と呼び出されます。
組長としてどうしたらいいのかわからなかった私のことを見抜き、
先生はこう言いました。
「バレーボールのキャプテンだと思ったらどうだ?
今までの組長はもっと学年も上だから、ショーでも踊らなかったけど、
越乃はまだ若いから、みんなと一緒に歌ったり踊ったりできる。
みんなのお父さんみたいになる必要はない。
プレイヤーとしての背中を見せて、いざという時には締める。
それ以外はみんなと一緒にこれからもやっていっていいんじゃないか?」
そのキャプテンという言葉が、ストンと心に落ちました。
それだったら出来るかもしれない。
みんなと一緒にプレイをするキャプテンを目指そう。
面倒をみるだけが組長ではないんだ。
みんなと共にやっていくという意識でやったらいいんだ!
そこでようやく霧が晴れたような、目が覚めたような気持ちになりました。
私を導いてくれた忘れられない言葉です。
そこから、キャプテンという意識で、
プレイヤーとして、私なりの組長の形を作り始めました。