難易度が高い『エリザベート』の曲

初めて『エリザベート』を観たとき、すぐにこの作品が大好きになりました。
黄泉の帝王が主人公で「死」がテーマになっているから宝塚っぽくないようで、でも宝塚にピッタリはまっていて、
何よりも音楽が好きで、歌詞が好きで、ずっとずっと歌っていました。

一番なりきって歌うのは、シシィの歌です。
まぁ、あの高音は私の低い声ではどんなことをしても出ないのですが・・・
でもやっぱり良い歌だなぁと酔いしれ、
ウォーミングアップのときには必ず歌い、一人で何役も歌いながら、
声を出してテンションをあげていくというのをずっとやっていました。
そう、『エリザベート』が自分の組で上演されるまでは・・・

月組でも上演する事が決まり、あの作品がやれるんだ! と嬉しさに飛び上がり、
稽古が始まった途端、曲の難しさに直面しました。

え? 私が今まで聞いていた曲は、譜面で見るとこんなにも難しいの!?
そして歌ってみると、これまた難しい!!!!!
私が今まで鼻歌レベルでウォーミングアップで大熱唱していた歌は、
こんなに難易度が高かったとは・・・

翌日から、朝のウォーミングアップでの大熱唱はやめました。
本役のシシィやトートがいるのに、私が大熱唱するのはいかがなものかと。
歌えないのはつまらないけど、その分家の中や車で大熱唱しておりました。

みんなで作り上げた『エリザベート』という作品は、大盛況で終わりました。
その作品に二度も出演できたことは、本当に幸せなことでした。

まさか三度目があろうとは・・・
全く思いもしないことでした。

思いがけない三度目の『エリザベート』は、退団してしばらくしてからやってきました。
退団後、自分の芸能生活を終わりにし、これからどうやって生きていこうかと迷っていた時に、 
「エリザベートガラコンサート」出演の依頼が・・・

一瞬、出てもいいものか、戸惑いと不安がよぎりました。
なぜなら、もう舞台には立たないつもりでしたから。
でもこの依頼のあと、心の中でくすぶっていた気持ちが大きくなり、
やはり私は表現者として生きていきたいと、
自分の本当の気持ちに気付かせてくれた大切な舞台となりました。

エリザベートガラコンサート楽屋にて。元組長出雲綾さん(左)、元副組長嘉月絵理さん(右)、元月組トップスター瀬奈じゅんさん(中央手前)