明るく自由な娘・ひなたと生真面目な母・るい。親子でありながら育った背景は大きく違う(写真提供◎NHK)

 

100年経っても受け継がれていく家族の絆

1965(昭和40)年、ひなた誕生。結婚したるいとジョーが移住した京都にある下町の商店街で、回転焼きの店を営むようになったふたりのもとに生まれたひなたは、ジョーの影響でテレビの時代劇をよく観る活発な子に育つ。

時代劇以外にも、1975(昭和50)年からスタートした朝ドラ『おはようさん』、1983(昭和58)年からスタートした『おしん』など、歴代の朝ドラも登場。ラジオが貴重だった安子の時代を経て、戦争の影に怯えることもなく、各家庭でテレビを観ながら団欒できるようになった、「安心の時代」に生きるひなた。

ゆるりとした日々を過ごせる時代でもあり、家族の愛情にも恵まれて育つひなたは、何をやっても三日坊主になりがちな現代っ子に育つのも無理はない。現在にもっとも近い時代背景ゆえに、すんなりと物語に入っていけたが、そんな大阪パートでちょっとびっくりしたエピソードも。

条映太秦映画村で働くようになったひなたは、大部屋俳優の五十嵐文四郎(本郷奏多)と恋に落ちる。だが、ひなたのもとを去り、ハリウッド映画の監督アシスタントになって10年後に再会した文四郎が、別人と結婚を決意したくだりにはずっこけた。そもそも京都編では、コミカルな描写や劇中劇など、ポジティブな仕掛けがたくさんあるが、さすがに文四郎の決断には「なんでやねん!」とツッこんでしまった大阪人の筆者である。

最終回が迫る今作だが、英会話とともにキーポイントだったのが、あんこのおまじない。もとは父・金太(甲本雅裕)から安子が教わった「おいしゅうなれ」というこの言葉を安子・るい・ひなたが守り続け、小豆を煮る際に3世代にわたってつぶやく姿は、脈々と受け継がれていく家族の強い絆を感じさせる。

4月5日の放送では、日本を訪れたアニー・ヒラカワが大阪で磯村吟(浜村淳)のラジオ番組に出演。初めて観た映画をきっかけに押し黙った後、突然日本語で半生を語り始め、最後は岡山弁で涙ながらに「るい」と語りかけたのだ。母への愛ゆえ、岡山での過去ごと母を忘れようとしたるい。娘への愛ゆえに姿を消すことを選んだ母…。

100年の物語の結末は? 最終回まで、これからも見逃すことはできない。