なぜ「全勝」とは言わなかったのか

東京五輪に臨むにあたっては、選手たちに必ずしも5戦全勝で金メダルを目指そうとは全く言いませんでした。今大会は6チームしか出場していませんが、大会規定では、何回か負けても金メダルへの道は残されていましたので。

「とにかく金メダルを取りましょう」という話だけはしました。

もちろん、負ければ試合数が増えて日程も過酷になるので、首脳陣の中では「オープニングラウンドは絶対1位で通過しよう」とは言っていましたけれど。

「全勝」と言わなかったのは、北京の時の教訓です。予選リーグの初戦でキューバに負けて、落胆して切り替えるのにかなり苦労しました。

こういった準備も、決勝進出という結果に結びついたのかもしれません。

○日本 5 - 2 韓国

※本稿は、『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
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『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(著:稲葉篤紀/中央公論新社)

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