なぜ「全勝」とは言わなかったのか
東京五輪に臨むにあたっては、選手たちに必ずしも5戦全勝で金メダルを目指そうとは全く言いませんでした。今大会は6チームしか出場していませんが、大会規定では、何回か負けても金メダルへの道は残されていましたので。
「とにかく金メダルを取りましょう」という話だけはしました。
もちろん、負ければ試合数が増えて日程も過酷になるので、首脳陣の中では「オープニングラウンドは絶対1位で通過しよう」とは言っていましたけれど。
「全勝」と言わなかったのは、北京の時の教訓です。予選リーグの初戦でキューバに負けて、落胆して切り替えるのにかなり苦労しました。
こういった準備も、決勝進出という結果に結びついたのかもしれません。
○日本 5 - 2 韓国
※本稿は、『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(著:稲葉篤紀/中央公論新社)
2021年に開催された東京オリンピックで、野球日本代表が37年ぶりの金メダルを獲得した。五輪監督を務めた氏は、就任以来どのように侍ジャパンのチーム作りに取り組んできたのか。その舞台裏や秘蔵エピソードを明かす。