日常生活に支障が…加齢による筋力低下に対策を

このように運動時には、その強度に合わせて酸素を利用して素早くエネルギーを生み出す必要があるのですが、その能力の指標となるのが「筋力」です。つまり、筋力が高い人は体力があり、低い人は体力がないといえるのです。

みなさんは、階段を駆け上がったり走ったりすると、心臓がバクバクして息切れを起こしませんか。それは筋肉が運動強度に応じた酸素を利用できず、それを心臓や肺が補おうとして起こる現象です。逆に、筋力のある人は、息切れせず上り切れるはず。

残念ながら、筋力は20代をピークに、30歳を過ぎると徐々に減少。10歳年を取るごとに5~10%の割合で低下するといわれています。この主な原因は、サルコペニアと呼ばれる加齢性の筋肉量の減少によるもので、何も対策を講じないでおくと、はてはロコモティブシンドローム(運動器の障害)におちいり、日常生活に支障をきたす場合があるのです。

問題はそれだけではありません。人間は細胞内にあるミトコンドリアという小器官で、酸素をエネルギーに変えて活動しています。いい換えると、酸素が足りなければエネルギーが生まれないということ。

筋力が衰えると、ミトコンドリアの機能低下が起こり、酸素の不完全燃焼によって活性酸素が過剰に発生して、細胞・組織を傷つけます。それを修復しようと、炎症性サイトカインという物質が分泌され、「慢性炎症」が引き起こされるのです。

この炎症が、脂肪細胞で過剰に起きると糖尿病に、血管で起きると動脈硬化に。脳で起きると認知症やうつ病の原因になります。そしてこれらの病気がフレイル(加齢により心身が衰えた状態)を加速させ寝たきりの原因にも……。

けれど、安心してください。筋力は何歳からでも向上させることができます。ややきつい運動をする目的は、この加齢性の筋力の低下を防ぐことにあるのです。