「聞いたことのある駅」として

下町の小岩は実に「マイナー」な印象を持つ街だ。

『移民時代の異国飯』(著:山谷剛史/星海社新書)

小岩駅は東京23区の東端にある総武線の駅で、江戸川を挟んで隣の市川駅は千葉県になる。江戸川向かいの市川駅にはタワマンが建ち、千葉県で指折りのお屋敷街があり、小岩よりも街の評判がいい。

同じ東京23区の端でも、埼玉県と接する北の赤羽はJRの多数の路線が通るターミナル駅だし、神奈川県と接する南の蒲田はJRと東急と京急がある街で、都民であればまずイメージできる。ところが小岩はマイナーだ。

赤羽駅や蒲田駅がターミナル駅なのに対して、小岩駅は各駅停車しか止まらず、路線図では決して目立つことはない。おまけに隣に快速が停車する新小岩駅があり、だいたいの東京の住民ですら小岩駅と新小岩駅がごっちゃになる。僕もそんな認識だった。

東京東部の住民以外にとっては、「なんか聞いたことのある駅」くらいでしかないのが小岩だろう。