実際の距離以上に、心理的に遠く感じる

しかも小岩の街はあまりイメージが良いとも言えない。

治安の悪い歓楽街と言われ、最近では人々にフォーカスしたゆるいテレビ番組『月曜から夜ふかし』で、変わった人が集まる庶民的な街として紹介されている。同番組の司会のマツコ・デラックスをして「逃げたくなるんだけど、逃げられなくなる! 小岩に住んでしまったら一生小岩!」と言わしめる始末。

そもそも小岩は歓楽街なのに東京の中心部から遠く、地元住民以外は遊びに行きにくい。都民中心の飲み会があるとき、地元民の集いでもない限りは秋葉原より東の錦糸町・小岩・千葉方面で開催されることなど、なかなかないはずだ。

実際に調べてみると小岩から秋葉原までは各駅停車で7駅17分、新小岩から東京駅までは快速で4駅13分で、住んでいる人にとっては都心に出るのに案外近い。

しかし東京の西側に住んでいる人からすれば「山手線の東側のそこからさらに電車で何駅も行く」という感覚はひたすらに面倒くささを感じる。

東京から神奈川に行くには多摩川を、埼玉に行くには荒川を渡るが、東京から小岩へ向かうにはまず両国で隅田川を越え、さらに平井の先で荒川と中川を越える長い橋を渡った先に新小岩と小岩がある。実際の距離以上に、心理的にとんでもなく遠くに感じるのだ。

『錦糸町ナイトサバイブ』という漫画では同じく東京東部の錦糸町の歓楽街のひどさを紹介しつつ、「東京ってのは東の端に行くほど残念になる」「総武線も東に行くほど残念になる」と紹介し、ネットで共感を得ている。

一方で小岩の評価として、東京の割には地価が安くて庶民的という声も定番だ。

小岩から放射状に商店街が広がり、チェーン店や飲食店に交ざってお香を売る店や味噌を売る店など実に渋い店も点在している。商店街は遠くまで続くが、シャッター街となり、一部の建物は解体されている。その雰囲気は地方都市のそれに近い。

このように小岩は都区内にありながら、都民からは遠すぎるという印象があり、地元民以外からは注目されにくいのかもしれない。