大学の授業料は値上がりし続けている

高校生の時進路指導の先生が、集会で「お前たちはもう大幅な遅れをとっている」と言っていたが、その意味が分かったのもこの頃だ。中国地方の片田舎と違って、関西では(地域にもよるが)私立中学へのお受験なるものがあると初めて知ったのだ。

進学校と言えば当たり前に公立で、受験は高校だけ。それが普通だと思って生きてきたが、世間には小学生や中学生から、すでに大学受験を目指して準備をはじめている人がいる。さらに大学を選ぶ基準も就職だというのだから、すべて逆算したうえで選択を重ねていくのだ。

低所得者層にとって進学のハードルはとても高い。授業料は所得や物価の上昇とはかけ離れて値上がりし続けている。

授業料は昭和50年に国立大学で平均年額3万6000円、私立大学で18万2677円だったのに対し、平成16年では国立52万800円、私立で81万7952円だ。

たとえ国公立であっても、4年間で200万円をゆうに超えるの授業料がかかるということになる。

国公立の場合、授業料免除の制度は充実しているとはいえ、少なくとも入学金と1年生の前期の授業料は全員が納めなければならない。

さらに、日本学生支援機構の調査(2020年11月実施)によれば、地方から都会に出て一人暮らしをした場合、家賃や食費その他もろもろをあわせた生活費は1年間で110万円程かかると言われている。

教科書は半期ごとに買いそろえなければならず、PCや電子辞書、スーツ(入学式や就活時)なども必要だ。

私はというと、PCは3年生まで買えず、放課後大学のPCルームに通った。それでも課題が間に合わなければ、休日もPCルームに行くためだけに片道1時間近くかけて大学に行く生活を送った。

電子辞書は買えないので、版が古い「紙の辞書」を中古で買い、授業に参加した。先生にあてられたとき一人だけ単語を調べるのが遅くて目立ち、先生が「紙の辞書って、いいよね」とフォローしてくれた。

そして授業で知り合った上級生の方が、使い終わったまだきれいな教科書を紙袋に大量に詰めて譲ってくれたのだった。
「使わなかったらメルカリで売りな」というメッセージ付きで。
半期しか使わない教科書でも1冊4000円するものもあり、学期ごとに買うのは痛いので、この先輩はまさに救世主だった。

中学まで一緒だった低所得者層の子どもたちは、大学を目指すことすらなかった。
様々な費用を工面できないことがわりきっているからだ。

一方で実際高卒と大卒では生涯賃金が5000万円以上違うと言われている。
教育費の高騰は、貧富の再生産を加速させている気がしてならない。

ヒオカさんの奨学金の書類(写真提供◎ヒオカさん)